2017/04/02

今週の為替相場を考える(4月3日~7日)


今週の為替相場を考える(4月3日~7日)

為替相場の現状はいくつかのテーマに分かれているが、米国の材料が中心となっていることに変わりない。

まず一つは、トランプ大統領・政権への信任の低下で、オバマケア撤廃の党内調整の失敗、連邦地裁による入国禁止令の差し止め、オバマ前大統領による盗聴問題の不確実性など、トランプ氏の支持率はギャラップの世論調査(28日)で35%まで低下している。トランプ大統領の規制緩和+大幅減税のメリットを先取りし、逆に低下していた米株と米金利は、先週は盛り返しているが、今週もドル相場に対して不安材料として残っている。

二つ目は、トランプ大統領・政権の通商政策で、初の米中首脳会談(6日~7日)では米国の貿易赤字が最大の関門になり、日米経済対話(18日~20日予定)では、ロス商務長官とペンス副大統領がそろって来日し、通称問題がテーマとなることは避けられず。特にロス氏は米国の鉄鋼業界は海外企業によるダンピングや補助金によって攻撃されているとし、日本を含め8か国に判ダンピング関税を適用する方針を示しており、ドル相場や円相場にとっては最大の変動要因になる可能性もある。

それと、トランプ大統領は31日不公正な貿易慣行の阻止で二つの大統領令に署名した。WSJ紙によれば、一つ目の署名は、貿易慣行を正確に把握するため、国別に問題の慣行をまとめるように命じ、米貿易赤字の原因調査と通商規定の乱用国への対策を政権に指示。もう一つの署名は、生産コストを下回る価格で米国に輸出している国、または、補助金を支給している国に科す制裁金の徴収方法の改善を目的としており、制裁金の未徴収額は28億ドルを上回るという。結果はしばらく先になりそうだが、気に留めておかなければならに事項の一つ。

三つ目は、FRBの金融政策で、3月15日のFOMCで予想通り利上げを実施したが、「イエレンFRB議長のハト派発言」と、「年内の利上げの可能性が計2回」にとどまったことでドルが全面安へと動いたことは記憶に新しい。最近では連銀総裁や理事の発言もタカ派・ハト派と意見が分かれることが多い。先週は比較的強い米経済指標や好調な入札結果、期末要因もあり、米金利が反発傾向を示しているが、トランプ政権への信頼度とFRBへの利上げ期待度は比例していることを考えれば、トランプ政権次第。

さて、現実に目を向けると、週間ベースの為替相場の変動は通貨間で大きく異なる傾向が相変わらず続いている。(※過去3週間の週終値ベースの変化を見ていただきたい。)
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USDJPYはようやく下げ止まり反発するも、上昇幅は0.05%と強さは感じられず。EURUSDは2週間上昇後−1.29%と下げ幅は大きい。逆にAUDUSDは2週連続の下げから立ち直るも+0.07%の上昇にとどまる。GBPUSDは2週連続の上昇で+0.59%上昇し、EU離脱の手続き開始は象徴的な動きにとどまる。


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今週の【通貨ペア別のレンジ予想】

トランプ政権の信任の低下は避けられないが、期末要因もはけ、通商政策で為替相場が動く流れが強まる。円相場は円高誘導よりも2国間協議へ。



◎USDJPY【予想レンジ 110.50~112.50】

USDJPYは、期末のリパトリやリスクヘッジの円高傾向も110円の大台割れ試すこともなく、一時112.20まで値を戻しているが、終値ベースでは上値の重さも再確認。

引き続きトランプ政権の政権実行への不信感からリスク回避の円買い振られやすい状態と、貿易不意均衡で、ドル安を求めるよりも2国間協議で不均衡是正を求める動きに、為替相場はニュートラル。

IMM通貨先物の円ショートポジションは減少傾向にあり、USDJPYのオプションではドルプット・円コールオーバーが続き、市場のセンチメントは円高を意識する状態は変わらず。3月15日のFOMC直前の水準115円までは遥かに遠い。


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◎EURUSD【予想レンジ1.0600~1.0800】

ユーロ圏経済指標は比較的堅調で、ECBの金融緩和策の終了期待に盛り上がり、一時昨年11月のトランプ大統領勝利時の1.0900の大台まで上昇したが、失速。逆に3月15日のFOMC直前の上昇スタート水準となる1.06台へと結果は振り出しへ逆戻り。金融政策を巡り北部と南部の格差の対立が続くが、しょせんはFRBの対応を見守る動きへ。

3月15日のオランダ下院選挙で与党自民党が第一党を維持し、フランス大統領選の世論調査ではマクロン氏の支持がルペン氏を大幅に上回り、ユーロ圏主要国の選挙への不安感もやや薄らぐ。目の前はトランプ政権の動き次第で、ユーロへの不安材料も特に見当たらない。

IMM通貨先物のユーロ・ショートポジションは減少傾向が続き、僅か−19,662コントラクトへ低下し、ユーロへの信任が高まっているが、EURUSDのリスクリバーサルは1か月、3か月、6か月とEURプット・オーバーで市場のユーロ安思考は変わらず。


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◎GBPUSD【予想レンジ 1.2400~1.26000】

29日に英国はリスボン条約50条を発動し、EUに正式に離脱を通知、2年間の離脱手続きがスタートした。今後の英国経済への悪影響の有無が相場変動のテーマとなるが、短期的には計りようがない。

スコットランド議会が英国からの離脱を問う住民投票の再実施を支持し、BOEの利上げ期待度もやや低下しているが、現時点では大きな混乱もなく、英国経済は予想外に底堅く、悲観的に考えることもできず。

IMM通貨先物のポンド・ショートポジションは引き続き10万台を維持し、主要通貨で最もショートが大きく、GBPUSDのリスクリバーサルは短期から中期と引き続きGBPプット・オーバーで変わらず。しかしながら、弱気なセンチメントの中でも、GBPUSDは1.25台を維持していることはサプライズ。



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2017/04/01

今週の主な材料(4月3日~7日)

今週の主な材料(4月3日~7日)

4月に入り新年度がスタートへ。今週のメイン・イベントは米中首脳会談(6日~7日)、FOMC議事録(5日)、そして、米雇用統計(7日)。

さらに広げてみれば、米ISM製造業景気指数(3日)、豪中銀金融政策(4日)、米ISM非製造業景況指数(5日)、ECB理事会議事録(6日)、カナダ雇用統計がそれに続き重要。

《米中首脳会談》
政治色の濃い相場変動が続く中では当然、トランプ米大統領と習近平中国国家主席との初めての米中首脳会談(6日~7日)を抜きにして考えられない。

トランプ氏はツイッターで「これ以上の貿易赤字は認められず、非常に難しい会談になる」と自らツイート。フロリダ州の大統領別荘での会談では、米中貿易問題がテーマとなることは避けられそうにない。

スペンサー・ホワイトハウス報道官も「米中間には大きな問題がある。南シナ海や貿易、そして北朝鮮の問題」と発言。トランプ大統領は先週末に「米貿易赤字の原因調査と通商規定の乱用国への対策を政権に指示する2つの大統領令」に署名しているが

トランプ大統領は米国のためにどのような成果を得ることができるのか? 信任の低下がささやかれている昨今、結果次第では、為替市場にも影響を与えそうである。

17日(または18日)~20日ごろまでの間。日米経済対話が東京で予定されており、ロス商務長官とペンス副大統領が麻生財務相と会うことになっており、当然通商問題も主テーマの一つになりそうである。


《FOMC議事録》
今回のFOMC議事録3月15日の議事録で、予想通り0.25%の利上げを実施したものの、「イエレンFRB議長のハト派発言」と、「年内の利上げの可能性が計2回」にとどまったことでドルが全面安へと動き、忘れることのできない日の議事録だけに注目度は高い。


《米雇用統計》
失業率予想は4.7%と変わらず、非農業部門雇用者数の予想は18.5万人と前回の23.5万人から減少が、週平均労働時間は34.4時間と変わらず、週平均時給は前月比0.2%と変わらずの予想になっているが、予想外の数字の変化で相場が動くことは間違いない。


詳しくは、来週の予定表をご覧ください。

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最新のIMMポジションから、 2017年4月1日(土曜)

最新のIMMポジションから、 2017年4月1日(土曜)


今回の集計日は3月28日で、市場では期末要因による通貨のリパトリの動きが目立ってきた時期でもあり、米ヘルスケア法案の採決を断念した以降のトランプ大統領の信任の低下やドル安からようやく立ち直りかけ、29日の英国がリスボン条約50条を発動し、EUに正式に離脱を通知する前日に当たる。

CFTCが発表したIMM通貨先物の投機部門のポジションでは、円、ユーロ、ポンド、スイス、カナダドル、豪ドル、NZドルの7通貨のネットポジションは4週間ぶりに、−198.530→−169,279コントラクトとショートが減少し、ドルへの信任度合いの低下を示している。

特に目立った点は、相変わらず豪ドルだけがロング(+44,955→+53,138)で、数字的にはスローながら拡大傾向にあり、AUDUSDの上昇への変化を期待しているように思えてならない。

ポンドは、29日の離婚宣言の発動のリスクを警戒して-107,844→-104,075と引き続き10万コントラクトと大幅な売り越しを維持してはいるが、先週のGBPUSDは1.2400~1.2600と以外にも底堅く推移し、このギャップは今週以降のGBPUSD相場を面白くする可能性がある。

円は、-66,987→−53,181とショートが減少。USDJPY相場は110台まで円高が進んだ後、期末要因やリスクヘッジの巻き戻しに112円台を一時示現しているが相変わらず上値は重い。しかし、ネットポジションでは引き続き円ショートを維持しており、投機筋の円の先安期待は続く。

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2017年4月1日(土曜)昨日31日、海外市場の動き

2017年4月1日(土曜)昨日31日、海外市場の動き

期末、月末、週末31日の海外市場は、米株は弱く+米金利は低下(ダドリー+カシュカリ+ブラードのハト派発言)。英株は弱いが金利は上昇。結果だけ見れば、金利差の変化にポンドが強く(期末のポンド買い需要も)。

トランプ大統領は「米貿易赤字の原因調査と通商規定の乱用国への対策を政権に指示する2つの大統領令」に署名+USTRは「63カ国の貿易障壁」に言及。米為替政策+通商政策のリスク回避なのか円が強い。

独小売売上高+ユーロ圏CPIは弱く、個人消費支出+コアPCE価格指数は弱く、PCE価格指数は強く、シカゴPMIは強く、ミシガン大学消費者信頼感指数は弱いと強弱混在。カナダGDPは予想外に強く、原油価格も底堅く結果的にカナダドルも上昇へ。

USDJPYは、アジア市場の高値112.20、欧州市場の高値112.05、米国市場の高値111.77から111.20台まで下落し、前日比−0.50%で、円高傾向を残して終了した。円はポンド以外のクロスでの全面高で、EURJPY−0.64%、CHIJPY−0.65%、AUDJPY-0.66%と円高が加速。ベネズエラの危機+南アの政情不安も気になる。

EURUSDは、弱い独・ユーロ圏の経済指標にもユーロ売りは限定的だったが、クーレECB専務理事はECBの利下げスタンスは変わらずと発言。1.0670~1.7020のレンジの下限を割り込み、1.0650台まで続落し、堅調な欧州株+金利高にも関わらず前日比−0.16%と小幅安。期末要因でフィキシング近辺でのEURGBPの売りも強く、0.8560→0.8480台へ続落。

GBPUSDは、ネーションワイド住宅価格は2015年来で初めてマイナスへ、GDPの前年比は1.9%とやや弱い。EUの英国EU離脱交渉に関するガイドライン草案では「EUは最終条件で合意する前に、自由貿易で英国と交渉する用意がある」とのプラス材料も現実味は薄そうだが、期末の特殊要因のEURGBPでのポンド買いも強く一時1.2540台へ上昇し、終盤には一時1.2550台まで上昇し、ポンドショートの巻き戻しが続く。
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ダドリー総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁=金利が年内に上昇することを想定しつつも、米経済動向については慎重な見解を示し、FRBのバランスシート縮小を要請→ 米債券利回りは低下。

ダドリーNY連銀総裁=①景気は過熱しておらずFRBが金融引き締めを急いでいない。②早ければ年内にもバランスシートの縮小に着手することが可能。

ブラード・セントルイス連銀総裁=①インフレは抑制されていることから、予防的な利上げは必要ない。②バランスシートの縮小に着手する際には、利上げを停止する可能性がある。

カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁=①肥大化したバランスシートの縮小を望んでいる。②FRBのインフレ、雇用目標にまだ達していないとし利上げを急ぐ理由はない。

トランプ大統領=米貿易赤字の原因調査と通商規定の乱用国への対策を政権に指示する2つの大統領令に署名。米製造業の偉大な復活へと道を開く大統領令に署名し、悪い通商協定を修正すると発言。

米通商代表部(USTR)の年次「外国貿易障壁報告書(NTEレポート)」=①中国の恒常的な過剰生産能力のほか、強制的な技術移転や米国産牛肉の禁輸措置など多岐にわたって非難。②報告書では63カ国の貿易障壁に言及。

IMF公表データ=第4四半期の世界の外貨準備に占めるドルの割合が4四半期ぶりに上昇。ドル準備は4.94兆ドル(全体の約63.3%)→過去最高の5.05兆ドル(全体の約64%)。人民元は845.1億ドルで1%強、ユーロ20.2→19.7%、円4.4→4.2%と2016年第1四半期以来の低水準。世界の外貨準備は11.06兆ドル→10.8兆ドルへ低下。


EUの英国EU離脱交渉に関するガイドライン草案=EUは最終条件で合意する前に、自由貿易で英国と交渉する用意がある。交渉の第1段階で離脱条件で大幅な前進を示す必要があり、交渉の第2段階で自由貿易の交渉開始で合意することも可能。→4月29日のEU首脳会議で承認へ。

EUの英国EU離脱交渉に関するガイドライン草案=2019年の英国のEU離脱後で、自由貿易協定締結前の移行期間中、英国はEU予算への拠出や司法などEUのルールを受け入れる必要がある。EU単一市場の一部であり続けるには、欧州大陸からの移民容認など、EUが掲げるいわゆる4つの自由すべての尊重が必要。

NATO外相会議=ティラーソン米国務長官は、米国は過度の負担をしている。

ベネズエラで危機が深まる=社会党寄りだった検事総長が、野党多数の議会の立法権を最高裁が剥奪したことを違憲と発言。小規模なデモが散発的に起こり、これを懸念して国債市場では投げ売りが出た。野党はこの混乱に乗じて、軍隊に憲法上の秩序を「回復」するよう求めている。


2017年3月31日(金曜)欧州・米国市場の動き

2017年3月31日(金曜)欧州・米国市場の動き

週末、月末、期末の31日。米株と米金利は弱含みで推移、為替相場は小幅な変動にとどまるが、ロンドンフィキシングではドル売りが強まる。

ダウ+S&P500+Nasdaq共に小幅な変動にとどまり、米10年債利回りは2.41%へ低下、2年債も1.26%台へ低下。

米個人所得は前月比0.4%と予想通り、個人消費支出は前月比0.1%と弱く、コアPCE価格指数も前月比0.2%と弱い。シカゴ購買部協会指数は57.7と強く、ミシガン大学消費者信頼感指数は96.9と弱く、強弱が混在。ダドリーNY連銀総裁は「早ければ年内にバランスシートの縮小に着手することが可能」と強気な発言にも米金利は低下へ。

EURUSDは、独失業率は5.8%と予想外に改善、独小売売上高は前月比−1.8%と弱く、ユーロ圏CPIは前年比1.5%と弱く、直後はEUR売りが強まるも、結局は1.0670~1.0700の狭いレンジで上下変動が続くだけ。

USDCADは、原油価格(WTI)は50ドル台を維持し、欧州市場で一時1.3370近くへ上昇。カナダ月次GDPは0.6%、前年比2.3%と強く、直後はカナダドル買いが強まり1.3340→1.3290へ上昇するも、結局も元の水準となる1.3330台へと逆戻り。

USDJPYは、アジア市場の112.20をトップに、米株と米金利は軟調で、111.70を割り込むと短期筋の売りが強まり、ロンドンフィキシングでは111.50台を割り込み続落へ。

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ダドリーNY連銀総裁=早ければ年内にバランスシートの縮小に着手することが可能。景気が予想に一致して推移すれば、FRBが年内。もしくは2018年に保有証券を再投資せず、緩やかなペースで償還させ始めたとしても驚きではない。

クーレECB専務理事=ECBが過去最低の金利水準維持と追加利下げのスタンスを見直すことは正当化されるが、現時点での協議は時期尚早。

トゥスクEU大統領=①これから始まる交渉は厳しく複雑なものになり、時として対立が生じることもあるだろうが、そうした事態を避けることはできない。②あらゆる問題を同時進行で交渉すべきとの意見が英国の一部で出ているが、実現しない。

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