2018/08/19

今週の為替相場を考える(8月20~24日)

今週の為替相場を考える(8月20~24日)

日本はお盆も終わり酷暑も緩和気味。今週のテーマは、米中通商協議と追加関税発動の有無、トルコ危機の回避と新興国通貨の安定の有無、パウエルFRB議長発言と米経済と追加利上げの度合、英国のEU離脱まで残り7~8か月に迫ったブレグジット・リスク等で、市場参加者が考えることは皆同じではないかと想像できます。

米中通商協議(22~23日予定)で貿易摩擦の解消に向けた糸口を見出すことができるのでしょうか? その結果を受けて23日の米中制裁と報復関税が実施されるの、それとも回避され、11月の中間選挙に合わせた米中首脳会談に期待感を先送りすることができるのでしょうか?

通商協議が失敗に終わり、この結果を受け予定通り制裁と報復関税が発動され、株安となれば債券は買われ(利回り上昇)し、リスク資産が売られ、為替相場は人民元売り=豪ドル売り+新興国通貨売りが強まり、円とユーロとドル高になると思われます。

逆に予想外に制裁が回避され11月の米中首脳改題まで結論が先送りされることになれば、株高と債券相場が上昇(利回り低下)し、リスク資産の買いで為替相場は人民元買い+豪ドル買い+新興国通貨が買われ、安全通貨の円とスイスフランの売り圧力が強まることでしょう。

トルコ危機は、トルコ政府による大規模なトルコ経済のサポート発言と、トルコ中銀によるステルス利上げと勝手に判断していますが、今週もTRYが反発傾向を強めるのか? それとも、再びトルコ・アセットの売りとトルコリラ売りの洗礼を受けるのでしょうか? 

注目のトルコの格付けですが、先週末に S&Pグローバル・レーティングは投機的等級の「BBマイナス」から1段階引き下げ「Bプラス」に、ムーディーズも長期発行体格付けを「Ba2」から「Ba3」に引き下げ、格付け見通しを「ネガティブ」に変更していますが、予想通りの結果と思われます。

カンザスシティー連銀主催のジャクソンホール・シンポジュウム(23~25日)で24日にパウエルFRB議長の講演が予定されており、ドルについて+追加利上げについて+通貨危機についてどのような発言をするのでしょうか? また、前回のFOMCでタカ派発言にドル買いへ動いたFOMC議事録から新たな材料が示されるのでしょうか? 米国と他国の貿易戦争のリスクについて何を読み取ることができるのでしょうか?

以上のような要因が今週の変動の元となることに間違いなさそうで、それ以外でも、米国とメキシコのNAFTA再交渉の行方とその結果によるカナダドルへの影響の有無。豪中銀議事録、日本のCPIの結果など考慮に入れ、どのような戦略を考えればいいのでしょうか? テクニカル要因と合わせて考えてみたいと思います。


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USDJPYの予想レンジ(面白くありませんが現状では、110.00~111.50)

USDJPY、円はリスク回貨NO.1の通貨でリスクの影響を強く受けることは間違いありません。今週の米中通商協議や新興国通貨の動きが明確になるまでは、USDJPYは110.00~111.50のレンジを抜け出すことは難しく、このレンジ内で取引されることをまず前提に考え売り買い両サイドを意識しています。

テクニカル面で、短期では売りサインで変わっていませんが、110.30台をボトムにした流れが続き大きな下値のポイントになっています。また、110.30を割り込んでも10.00円を継続的に割り込むことができるかを判断する必要がありそうです。逆に111.50を超えてくればショートは撤退することになりそうです。

中期的にはニュートラルで110.00~111.50のレンジの継続ですが、先週の終値は6週間ぶりの安値水準となる110.40台で終了したことで売り圧力を残しており、下値と試す動きが期待できます。

長期的には買サインで変わらず109.00~113.00のレンジの継続で、買いの流れからの変化はまだ確認できずにいます。

IMM通貨先物のポジションからは、【円】前週-62,807→-58,368(4,439)
6月19日から9週間続く売り越し状況は変わりませんが、トルコリラ危機のリスクや米中貿易戦争のリスクを意識したのか直近では3週連続し前週比で円の買いが微増しており、リスク回避の円買い需要が高まっていることが裏付けられています。

オプションの1m デルタ25のリスクリバーサルから
前週末と比較すると、0.95→1.30とドルプット・円コールが拡大し、円高を意識した動きとなっており、この傾向は長いところも続いています。


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EURUSDの予想レンジ(1.1350~1.1550)

EURUSDは、円と同じく今週の米中通商協議や新興国通貨の動きに加え、イタリアの政局、ブレグジットの動き、さらに、米EU通商協議の動きも気になります。

短期的には、先週末には10日以来の高値となる1.1430台まで上昇したことでユーロ先安感が和らぎ買のサインが点灯していますが、大台の1.1500をクリアに上抜けできるかが大きな課題となっています。中期的に見れば1.1300~1.1550のレンジ、長期的には1.1150~1.1620のレンジでダウンサイドの継続から脱しきれず、ユーロ安の流れが続いています。

IMM通貨先物のポジションからは、【ユーロ】前週10,565→-1,789(-12,354)
2017年5月9日から続いたユーロの買い越し増は67週間ぶりのその幕を閉じ売り越しへと変化しました。米EU通商協議は改善が期待されていましたが、直近のトルコリラ暴落、イタリアの政局不安、ブレグジット・リスクもあり、米ドルへの信認拡大が要因と考えられます。

オプションの1m デルタ25のリスクリバーサルから
前週末比と比較すると、1.20→0.85とユーロプット・ドルコールが縮小しており、ユーロの買い戻し圧力を意識した動きとなっており、この傾向は長いともろも続いています。


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AUDUSDの予想レンジ(0.7240~0.7370)

AUDUSDは、豪中銀の議事録でハト派の内容は織り込み済みです、米中通商協議の影響をまともに受ける通貨で、今週はこの結果で相場が左右されることは間違いありません。

短期的には、先週は8月9日以来となる0.73台に上昇し終了したことで豪ドル先安観が和らぎ買のサインが点灯していますが、25日MAの0.7370を超えることができるかを注目しています。中長期では売りサインは消えず、0.7200~0.7500のレンジを示しています。

IMM通貨先物のポジションからは、【豪ドル】前週-54,540→-51,783(2,757)
4月3日から20週間売り越し状況は変わらず、前週比では以外にも増加傾向にあります。集計日ベースのAUDUSDを見ても8月7日(0.74198)→8月14日(0.72417)と豪ドルが売られる傾向にあり不思議でなりません。集計日後になりますが、米中貿易交渉の行方に進展が見られ人民元高へと動きAUDUSDも上昇していたことが思い出されます。

オプションの1m デルタ25のリスクリバーサルから
前週比と比較すると、0.70→1.05と豪ドルプット・ドルコールが拡大しており、米中通商協議の決裂を意識して事前に豪ドル売りをヘッジしていた可能性もあります。この景況は長いところでも顕著になっていますが、何等かの合意があれば豪ドル買が予想外に拡大する可能性も意識する必要がありそうです。


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