2019/05/19

今週の為替相場を考える(5月20~24日)

今週の為替相場を考える(5月20~24日)

米国は制裁関税第3弾の税率10→25%への引き上げで中国は報復関税を発動する中、ついに中国からの輸入全てに制裁関税を課す第4弾の発動を決め詳細を公表し、手続きが終了後で7月初めまでに発動するとみられている。また、ファーウェイなどをエンティティ・リスト(禁輸措置対象リスト)に正式に加え海外諸国からの迂回輸出もできないように縛っている。報復として中国が保有する米国債1.1超ドルの一部を売却するのではとの懸念の声も。

こんな情勢の中でも比較的と言ったら語弊があるかもしれないが、中国発の報復措置や強硬な発言も少なく、債券、株式、為替市場と意外にも冷静な動きで、全てを織り込んだ水準となったのか? それとも、6月28~29日のG20で来日した際に米中首脳会談の開催と修復を期待しているのだろうか?

株式市場は、先週の週明けをボトムに反発しているが、新興国株の伸びは鈍く、債券利回りは概ね下げ止まってはいるが反発力に欠け、完全にリスク回避の相場が反転している状況と思えず、次の一手を待っている状況に思えてならない。

為替相場は株式市場と連動しながら、USDJPYはリスク回避の円買いに週明けの109円ギリギリまで値を下げるも、これをボトムに110円台まで反発。Weeklyベースでは4週間ぶりの反発となり、109.00~20がボトムだった可能性も捨て切れないが、完全に円売りに変化するような材料も見当たらず。

一方、中国経済と連動性が高いAUDUSD(NZDUSDは連れ安)は週末の総選挙で予想外にモリソン首相は勝利!米中間の貿易摩擦の激化に長期間の続落傾向は止まらず、中国の出方待ちで変化する思われるが現状ではボトム感は感じられず。GBPUSDはブレグジットを巡り政治的混乱は止まず、支持率の急低下にメイ英首相は事実上の退陣表明へとつながり、5月3日の1.3170台から1.2710台まで急降下し、やり過ぎとは思うが、次回のEU離脱合意案の議会採決も否定されることは間違いなさそうで、次の動き待ち。

EURUSDとUSDCADは予想外に検討しており、EURUSDはEU議会選挙を控え、EU財政規律を否定しトランプ大統領的発言を支持するサルビーニ・イタリア副首相の超過激的な発言や、強さが見られない欧州経済にも関わらず、クロスでも買い選好で過去4週間は大枠1.1100~1.1250のレンジ内での取引を維持。ポピュリズム支持者が台頭するのか? 現在から勢力図はどのように変化するのだろうか? 

USDCADは過去3週間にわたりドル高傾向の中でも動ぜず大枠1.3380~1.3500のレンジに止まっている。原油高のフォローや米国が懸案のカナダとの鉄鋼・アルミ関税撤廃で合意、カナダ経済の先行きに対してポジティブなポロズ・カナダ中銀総裁も好材料となっている。


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先週は米国の中国に対する強気な制裁関税措置にリスク回避の円高が進み、英国の政治的リスクの高まりにポンド安が進んだことで、共に予想範囲を超えてしまった。


USDJPY 予想レンジ(109.30~110.30→50)

先週は109.20近くをボトムに久々に反発し、先週末は109.50が固く反発していた。110.20~30が次の上値の重要なポイントであることに変わりなく、111.00の大台を超えるようならば円高相場が終了と判断できそう。ただ、米中貿易摩擦は新たな段階を迎え、米中共に安易な妥協案で合意するとは考えにくい。

人民元安傾向は止まらず、米債利回りは下げ止まってはいるが反発力は鈍く、新興国市場の株価は弱く、戻り売り圧力もそう簡単に収まりそうにない。メイン予想は109.50~110.20、さらに円安にスライドするのかは円クロスがカギを握っていると思っている。

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GBPUSD 予想レンジ(1.2550~1.2800)

超党派協議は決裂、16日にはついにメイ英首相は、EU離脱協定の採決後となる6月上旬に辞任時期を表明へ。次回の離脱協定案の合意は難しく、英議会選に向けた世論調査では離脱推進派の新党ブレグジット党が34%を占め、メイ首相の保守党は11%、労働党も21%と完全に世論は現政権と野党第1党から離反しブレグジットを求める動きへ。

となると、一旦は材料の出尽くしで反発することも考えらえるが、ポンドに対して積極的に買い戻しの期待もできず、解散・総選挙のリスクも消えず、戻り売に引き続きボトムを試す動きが続きそうである。

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AUDUSD 予想レンジ(0.6780~0.6950)

週末の豪州総選挙の結果は、モリソン首相の与党勢力・保守連合が予想外の勝利となり、長期間下げ続けている流れからサプライズのAUD買い戻しも期待できるが、そう長続きできそうにない。

16日の豪失業率は上昇し(逆に雇用者数と労働参加率は上昇したが)、次回の利下げ時期を探る動きや、米中貿易摩擦の激化! 人民元安! 新興国株の弱さ! それと豪中銀の利下げ期待を考えれば、下値を再び試すリスクは変わらず。


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USDCAD 予想レンジ(1.3380~1.3500、または、1.3335~1.3480)

中東の地政学的リスクに原油価格は高止まり、懸案の米国との鉄鋼・アルミ関税撤廃で合意、17日にポロズ・カナダ中銀総裁は「この先の利上げ幅や時期は未知数だが、金利が若干高めに動くのは自然な傾向」とあり、「雇用市場がカナダ経済の真の姿を現している」と語った。

10日発表の雇用統計では失業率が低下し雇用者数は増加、労働参加率と賃金も増加していた、素晴らしいことである。1.3380~1.3500のレンジ相場のレンジを継続するか、下限(CAD高)を試す動きを期待したくなる。


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