2016/08/07

今週の為替相場を考える(8月8~12日)

今週の為替相場を考える(8月8~12日)

今週の為替相場の流れを考えるとき、磁石が南極と北極を示すように、市場参加者の思考は全てが、ドル高へと同じ思考と方向に傾いているように思えてならない。

つまり、強い米雇用統計に米GDP予想値は上方修正され、9月のFOMCでは利上げ期待が膨らむ。一方、カナダ中銀、ECB、日銀、BOE、豪中銀、NZ中銀と緩和傾向の維持か追加緩和の必要性が高く。相反する経済政策の舵取りの違いにドル買いが強まる可能性である。

市場全体が同じ思考の場合は、通貨ペアによっても考え方が違ってくるが、ドル買い材料がすでに織り込み済みで、ドルロングポジションが積み上がってしまっているのか? それとも、スタートしたばかりなのかで違ってくる。米利上げ時期を巡るテーマな過去何度も材料視されており今回もそれを判断することは難しいと言わざるを得ない。

最新のシカゴIMMポジションを例とってみると、円はロング、ポンドとユーロは大幅なショートであったことを考えると、円高相場の期待が裏切られたようにも見え、ポンドとユーロの下落は市場の予想範囲内とでも考えられる。

今週は、金融政策の発表はNZだけで、経済指標では最重要の経済指標は少なく、中程度の経済指標の発表のみだが、米国発の材料は多く注目したい。※《詳しくは別途、今週(8月8日~12日)の注目材料を参照》。強い米雇用統計を受けて盛り上がった9月の米利上げきたが、さらに膨らむのか? それとも萎んでしまうのか? 


※※※※※※※※※※※※※※※

【各国中銀の直近の動き】

カナダ中銀は、昨年7月に政策金利を0.25%引き下げて以来、金融政策を継続中ながら、7月13日の会合では成長見通しの引き下げを発表。9月7日の会合を注目。

ECBは、3月10日に利下げと資産買い入れ拡大など意表を突く包括的で金融緩和策を発表してから半年目の9月8日のECB理事会が注目され、

日銀は、7月29日にETF購入の増額を決定するも打つ手に限界感が強まる。日本政府は、8月1日にGDPを1.3%押し上げるという大型の景気刺激策を発表、財政問題が気になる。

豪中銀は、8月2日に利下げを決定、低インフレが続く可能性を示唆し、9月6日に追加利下げの可能性も残る。

BOEは、8月4日に異例の包括的な刺激策を発表し、総裁と副総裁は追加緩和の可能性を示唆。

NZ中銀は、今週8月11日に政策金利を0.25%引き下げる可能性が高く、市場はそれを織り込みつつある。

8月5日の米雇用統計の非農業部門雇用者数は予想外強く2ヵ月連続の大幅上昇と返金時給と時間当たり賃金も上昇へ。


※※※※※※※※※※※※※※※


【通貨ペア別のレンジ予想】

 
◎USDJPY 【予想レンジ100.80~104.50】
『円安を試す週だが多くは期待できず』

最近では日本の「景気刺激策+日銀の追加緩和」で、過去に何度も円安期待が裏切られた記憶は消えず、市場全体では、積極的に円を売っていいのか、戸惑いを感じているように思える。今回、にわかに盛り上がる米国9月の利上げ期待に、どこまで円売りが続くのか? 米株と米金利の動きを合わせて考える必要があるが、目先はドル高の材料が多い。

一方、英国のEU離脱選択後の不透明英国とユーロ圏。中国経済の不透明性が顕在化するリスクも否定できず、いつもながらリスク回避の円買いは定番で、ドル以外の他通貨での要因を考慮すれば105円を上回る極端な円安も考えにくい。
  

◎EURUSD【予想レンジ 1.0980~1.1200】 
『方向性見えないが、米利上げ期待の影響は受けやすい』

最近のユーロ圏発の経済指標は相変わらず強弱混在するも、それほどの落ちは感じられない。4日のECBの経済報告書では、「ユーロ圏の物価上昇を支えるため、必要があれば対処する準備ができている」と追加緩和を示唆する発言が気になる。

3月10日のECBは包括的な大規模な金融緩和を実施してから、次回の9月のECB理事会でちょうど半年を迎える。今週の相場にどのような影響を及ぼすかは不明ながら今後の材料に使われやすい。また、米利上げ期待の高まりによりEUR買いも限定的。


◎GBPUSD【予想レンジ 1.3000~1.3250】
『包括的な刺激策によるプラス評価と、米利上げ期待の狭間』

予防的な措置とはいえ、BOEは7年目にして異例の包括的な刺激策を発表した。予想外のサプライズで、中銀総裁・副総裁共に追加緩和の可能性を示唆。ふと、3月10日に実施したECBの包括的な金融緩和策を思い出す。小出しの緩和策で失敗した日本の後追いを避けるために、大規模で市場の意表を突く決定とも考えられる。

3月10日、ECBの決定で1.10の大台を割り込んでいたEURUSDは、翌週には1.34台まで上昇した。今回は英国のEU離脱という要因もあり一概に同じ状況とは考えにくいも、GBP相場の長期的な弱さは変わらないが、目先の底打ち感もアイディアの一つとして考えて置く必要があるが、米利上げ期待が作用し上値も限定的と思われる。


◎AUDUSD【予想レンジ 0.7550~0.7700】
『底堅さを感じるが、0.77が大きな壁』

予想通りとはいえ、豪中銀の利下げにも関わらずAUDUSDの上昇は驚きで、AUDの強さを感じられる。特に0.75中心で揉みあい相場を経てからの上昇だけに、0.75が底値になり、0.77が上限となっている。

マイナス要因としては、豪中銀による追加緩和の可能性は残り、今週のNZ中銀の金融政策の結果の影響を受けやすいことと、米国の利上げ観測の影響も無視できないものがあり、結局は0.77が大きな壁になる可能性も意識したい。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※