2016/01/31

今週の為替相場を考える(2月1日~5日)

今週の為替相場を考える(2月1日~5日)

原油価格と株価連動の為替相場に、円売り材料が新たに加わる展開へ

日本市場を激しく振動させた、突然とも思われる日銀のマイナス金利の決定。直前・直後の株式・為替市場は上下に激しく揺れる混乱状態となり、結局は海外市場にも影響を与える株高+円安相場となりました。

市場の混乱を抑えるべく市場との対話を重視し、金融政策の変動を最小限に抑制させ、織り込ませるような配慮を続けている昨今の世界的な金融当局の動きと異なり、やや違和感が生じます。

当日の朝に発表された全国CPIコアコアと東京都区部CPIは弱く、2%のインフレ目標の達成の危惧を意識したのでしょうか? それとも、甘利大臣の更迭が強気になれない日本経済や日本株に追い打ちをかけることを危惧したのでしょうか? 

いずれにしても、日銀は5対4の僅差ながら、量的・質的に加え、マイナス金利と、三拍子そろった緩和策へと新たな舵を切っています。日本の10年債利回りは0.23%→0.10%へと56%以上下落し、新たな円売り材料が突然現れたことで、この影響が今週の為替相場に与える影響は避けられそうにありません。

思い出すのは、ECBの過去の追加緩和策です。ECBも政策金利を0.05%と日銀とほぼ同水準まで下げ、2014年6月にはドイツ等の反対を押し切り、マイナス金利(預金ファシリティ金利0.0%→-0.10%)を実施しています。

ちょうど一年前の1月のことですが、ECBは月間600億ユーロの資産買い入れを決定。それでも、デフレ懸念は収まらず、昨年12月には-0.30%まで域下げ、QE期間を延長し、今年の3月理事会で更に追加緩和をするかを判断する決意を発表しています。

米国は、追加利上げのスピードにブレーキがかかり、中国は、新興国市場の低迷や経済政策の転換と過剰設備投資に成長の鈍化は止まらず、人民元安に頼る動きが続いています。ユーロは、一向にデフレ脱却をできずユーロ圏加盟国内での対立が目立ち、追加緩和もやむを得ない状況となっています。

英国は、EU離脱の国民投票の実施を早ければ年央に控え不安定な状況が続き、原油価格の下落にインフレ見通しは弱く、金利の引き上げは先延ばしせざるを得ない状況です。カナダ・豪州・NZは、原油価格・資源価格の低迷や中国経済の鈍化に、強さが見られず、目先の原油価格の上昇も安定せず、自国通貨高を避けたいことも事実でしょう。

そう考えれば、今週も原油価格と株価に連動した為替相場の動きは変わらず、ドル高傾向と円安傾向も変わらず。そして、次に追加緩和を実施する可能性のある通貨の売りを狙ってくる動きも続くことでしょう。

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ドル相場

最近の弱い米経済指標は気になります。先週発表の米第4四半期GDPは前期の2.0%成長から市場予測の0.8%を下回る0.7%まで低下し、個人消費は2.2%と予想を上回っていますが、前期の3.0%からは大幅に弱まっています。

今週金曜日には米雇用統計の発表を控えていますが、市場予想は失業率5.0%と変わらずですが、非農業部門雇用者数の予想が19万人と前回の29.2万人から大幅な低下が予想されています。

FOMCで指摘されたように、中国や新興国市場など、海外経済の悪化が米国経済に悪影響を与えて初めているのでしょうか? 強いドルにも一抹の不安を感じざるを得ません。

ただ、為替相場は相対的なもので、このような不安定な中でも、米国以外の他国の状況がより悪い状況になっており、ドルロングの調整を別にすれば、ドル高傾向は変わらずと判断します。

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【EURUSD 予想1.07000~1.1000】
過去8週間では1.0700~1.1150のレンジで、過去3週間はより狭く、大枠1.0800~1.0950のレンジ相場が続き、今週もこのレンジで収斂する可能性は高くなっています。しかし、ユーロ圏のCPIはやや強含みながらも、独CPIや小売売上高は弱く、難民問題をめぐるユーロ圏内での対立。そして、突然の日銀追加緩和に、どうしても3月のECB理事会で追加緩和を期待したくなります。

EURJPYは、一時132円台まで上昇していますが、終値ベースでみるとダウントレンドのチャネル上限に位置しており、これをブレークして新たなユーロ高を続けることができるのか? EURUSD相場への影響もあり今週の相場展開が気になります。

【GBPUSD 予想1.4250~1.44500】
カーニーBOE総裁は、引き続き利上げの条件はまだ整っていないとし、年内の利上げ観測は後退しています。年央に予想されています、EUの離脱の是非を問う国民投票の実施の有無とその結果は潜在的なGBP売り圧力として残り、最近のユーロ圏各国の不調和はそれを増幅しているようにも感じられます。

そのような状況の中で、原油価格の持ち直しとEURGBPの売りもあり1.42割れをボトムに下げ止まり、大枠1.42~1.44のレンジ内で収まった値動きは評価されてもいいでしょう。ポンドは堅調とも取れる反面1.4500の壁は絶対的とも思われ、Weeklyチャートを見ても、1.42~1.45のレンジ超えた方向に動きが続く可能性が高くなっています。

【AUDUSD 予想0.7000~0.7150】
原油価格の上昇もあり、ドル高の中で豪ドルは堅調推移。AUDUSD0.7000の大台を越えて過去2週間は上昇が続き、主要通貨の中では豪ドルの強さが目立っています。気になるのは、AUDJPYの上昇にも先週末の2日間は0.71台を終値ベースで維持できずにおり、今週は0.7150の壁を上回り上昇力を維持できるかを注目しています。

今週は、2日に豪中銀の金融政策の発表が控えており、予想では2.0%の据え置きが予想されているものの、先のNZ中銀の決定後にNZDUSDが変動したと同じく、台風の目であることに変わりありません。

【USDJPY 予想119.50~122.50】
年初来の円高期待は露と消え、国債利回りは大幅に低下し、他国との金利差拡大もあり、新たな円安の展開へ。ただし、他国が歓迎する株価上昇とはことなり、円の独歩安はより穏やかへ。

日銀のマイナス金利採用はサプライズで、株高=円安の材料になりやすい環境にありますが、世界的に自国通貨安政策を維持しようとする中で、先の高値123.50~00円をすんなりと超えていくのかは疑問に感じられてなりません。

暫くは、119.50~120.50円をボトムに底固めしてから、次の上昇へ向かう材料を探す必要もありそうです。

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